香りをかぐだけで幸せホルモンが増えるとしたら、落ち込んでいる自分をケアしたい時とても役立ちそうですよね。
実はいくつかの精油で幸せホルモンが増えるという研究報告があります。
精油とはなんでしょうか?まずはアロマテラピーの基本を簡単にご説明しましょう。
精油とは?
「植物の花、葉、果皮、果実、心材、根、種子、樹皮、樹脂などから抽出した天然の素材で、有効成分を高濃度に含有した揮発性の芳香物質である。各植物によって特有の香りと機能をもち、アロマテラピーの基本となるものである。¹」
写真左手の遮光瓶に入っているのが精油です。光、湿度、温度などに弱いため天然の精油は必ず遮光瓶に入っています。透明の容器に入っているものは、天然精油ではなく人口香料なのでアロマテラピーでは使用しません。
精油をつくる工程で、自然界にある状態から100倍以上も濃縮されます²。
写真の中央の黄金色の液体はオーガニックホホバオイルで、精油を希釈して安全に使用するために使用します。
精油のことをアロマオイルという表現をする場合もありますが、精油そのものは、植物油のようにドロドロした油脂とはまったく違うものです。
1滴の精油には約40,000,000,000,000,000,000,000個の、すなわち四千垓個の分子が含まれている³ともいわれていて、ほんのわずかな量でも効果を発揮します。
アロマテラピーとは?
精油を用いてホリスティックな観点から行う自然療法である⁴。
植物からいただいた貴重な精油成分を使って、心、体、精神性、環境などを整えて健康に役立てようというものです。
具体的には、香りを部屋にただよわせる芳香浴や、バスタブに入れて入浴する沐浴法、ホホバオイルなど植物油で希釈して肌に塗るアロマトリートメントなどがあります。
中でも香りを嗅ぐだけでよいという芳香浴や吸入法は、多くの方が体験したことがあるのではないでしょうか?
そんな手軽な方法で幸せホルモンが増やせたら、疲れている時や落ち込んでいる時のセルフケアにぴったりですね。
それでは実際、どの精油に効果があるといわれているのでしょうか?
幸せホルモンを増やすアロマ
オキシトシンが増える精油
タッチング研究の第一人者、山口創先生の著作「タッチの魔法アロマの奇跡」によると、香りを嗅ぐだけで幸せホルモン・オキシトシンが増えるといわれている種類がいくつか紹介されています。
真正ラベンダー
クラリセージ
ネロリ
ジャスミンアブソリュート
ローマンカモミール
インディアンサンダルウッド
「その理由は、ラベンダーオイルに含まれている成分であるリナロールや酢酸リナリルに、オキシトシン神経を活性化させる作用があるからです。⁵」
上記のうち、インド産のサンダルウッドは手にいれるのが難しいと思いますが、それ以外の精油は日本でも手に入りやすく、どれも素晴らしい香りですし、幸せホルモン効果以外にも期待できる効果がたくさんあるので、専門店で香りを試してみるのもよいですね。
エンドルフィンを増やす精油
オキシトシン以外の幸せホルモンにβエンドルフィンという神経伝達物質があります。脳内麻薬ともいわれ、痛みを感じにくくする作用があります。
私がアロマテラピーを習った30年近く前、グレープフルーツ精油とローズ精油が多幸感とエンドルフィンに関わっていると教わりました。
あらためてその根拠としてどの成分が関わっているか調べてみましたが、文献がみつかりませんでした。わかったらまたご報告したいと思います。
あなたはグレープフルーツ精油やローズ精油を嗅いだ時に多幸感に満たされますか?
きっとその時の体調や気分でも違いますよね。
個人の香りの好みに関わらず、その薬理効果を期待しておこなうのが医療者がおこなうメディカルアロマテラピーですが、
一般の私たちは、自分の好きな香りで自分を幸せにすることができればよいのですよね。
ですからぜひ様々な香りにふれて、自分で幸せホルモンを増やす香りをみつけていただければと思います。
たくさんある精油の中で、上記が参考になれば嬉しいです。
まとめ
あぁ~いい香り、と全身が香りのシャワーで包まれたように感じる時、私たちの脳内では、なんらかの「幸せホルモン」が分泌されています。
成分としてはリナロールや酢酸リナリルに幸せホルモン・オキシトシンを増やす効果が期待できるという研究報告(参考文献5)ですが、日常生活で香りを楽しむには、好き嫌いがとても大切なので、あなた自身はどの精油で多幸感を味わえるのか、体験してみるのが一番だと思います。
お近くの精油専門店で、ぜひ香りの世界を体験してみてくださいね。
私たちも20本の精油を使って、多幸感を味わうワークショップを、毎月第二木曜日に茅ケ崎でやっています。
10代をピークに衰えていく嗅覚ですが、定期的に感性のアンテナを磨くことで瑞々しさを保つことができると私たちは考えています。
精油に限らず、パンの焼ける匂い、お米のたける匂い、ひきたてのコーヒー豆の匂い、赤ちゃんのミルクの匂い・・・あなたが最高に幸せなきもちになる香りはなんですか?
落ち込んでいると、香りも本当にわからなくなってきますので、ぜひ積極的に香りを「感じる」時間を楽しんでみてくださいね。
文:EHAJ代表 宝官明子
参考文献
1 公益社団法人日本アロマ環境協会『アロマテラピーアドバイザー認定講習会テキストVol.15』P9 AEAJ2016年
2 ロバート・ティスランド/トニー・バラシュ『精油の安全性ガイド上巻』p2 フレグランスジャーナル社2001年
3 同上 p17
4 公益社団法人日本アロマ環境協会『アロマテラピーアドバイザー認定講習会テキストVol.15』P8 AEAJ2016年
5 山口創『タッチの魔法 アロマの奇跡』P152 BABジャパン 2023年