発達障害という言葉を日常的に良く聞くようになりました。今や子どもの20人から50人に一人、ともいわれていますから皆さんのまわりにもきっと思い当たる方がいらっしゃることでしょう。
でも言葉は知っているけれど、発達障害とは何か、自閉症とは違うのか?などわからないことが多いと思います。
そこで発達障害の方とタッチケアを楽しむために知っておきたいことをまとめました。
目次
1.発達障害とは
発達障害とは、生まれつきの脳機能の発達のアンバランスさ・凸凹によって社会生活に困難が発生する障害のことです
厚生労働省の定義では:「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するのものとして政令で定めるものをいう。(https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html)
障害という呼び方になっていますが、病気ではありません。脳の特性による個性です。
出典:リタリコ/https://snabi.jp/article/77
2.発達障害と自閉症の違い
上記リタリコさんのサイトがとてもわかりやすかったので参照させていただきます。自閉症は発達障害の中の一つです。発達障害は、自閉スペクトラム障害(ASD)や学習障害(LD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)を含む大きなくくりになります。病気ではなく個性なので、お一人ずつ症状や困っている部分も違うため医学的判断の難しいグレーゾーンとよばれる方も多く、一般の私達も「発達障害ってこういう人」というイメージがつかみにくいのが本当のところです。
以前は自閉症の原因が親の育て方にあるといわれた時代もありましたが、現在は生まれつきの脳の特性によるものだと周知されるようになってきましたね。
自閉症とアスペルガー症候群、広汎性発達障害は切り離して分類するのが難しいため現在では自閉スペクトラム症候群と呼ばれています。スペクトラムとは連続体という意味です。
3.自閉スペクトラム症の特徴
対人関係が苦手、強いこだわりがある
でもこれって誰にでもあることですよね。たとえば相手の表情が読めない、空気が読めないことでコミュニケーションが難しい、というレベルから会話ができない、言葉が出ない、目をあわせることができない、といったレベルまで、本当に様々です。この特徴によって、社会生活に障害が出るかどうかが判断のポイントになってきます。
詳しくはこちらの資料が大変わかりやすかったのでリンクさせていただきます
▶子どもの自閉スペクトラム症/大塚製薬:スマイルナビゲーター
PDF資料子どもの自閉スペクトラム症ABC
4.タッチケアの期待される効果
自閉スペクトラム症を含む発達障害の方とタッチケアを楽しむことで、幸せホルモン・オキシトシンの分泌が増え、下記のような効果が期待できるのではないかと考えられます。
- 親子の愛着形成
- 対人に興味を持つこと
- 不安や恐怖が鎮まり心が安定すること
- 相手のキモチに共感する力を高めること
- 笑顔が増えること
5.ふれるのを嫌がる人とのタッチケア
しかし発達障害の方の特徴として感覚過敏・鈍麻がある方も少なくありません。
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚において他の人がきにならないような刺激を過敏にうけとりパニックになったり体調不良になったりするのが感覚過敏です。
抱っこを嫌ったり、優しくふれることを嫌がる方も多いので、タッチケアで幸せホルモンいっぱいにして笑顔になって欲しいと願う家族にとって、難しい問題です。
優しくふれるのに何が嫌なのだろうと不思議に思う方も多いと思いますが、自分の経験からいうと柔らかいもの、生暖かいものは特に自分の境界線より内側に入ってくる感じがします。例えば、ひき肉をこねようと思ってふれたら、自分がひきにくにとけていく感じがしてかなり気持ちが悪いです。(伝わるかな・・)
皆さんも、優しく触れるからといってまぶたの内側を触られたら嫌ですよね?それは怖いことですし、いくら健康に良いからと熱心に言われてもできれば避けたいことです。
また、家族に「なんで音消してテレビ見てるの?」と言われたりしますが、自分の丁度良い音量で聞いているだけだったりします。
誰でも自分の感覚をモノサシにして相手も心地良いだろうと判断するわけですが、感覚過敏の方を前にしたときはその常識をすべてフラットにするところかが始めましょう。
まず一番大切なことは、優しいタッチ自体をその子が好むかどうかを知ることです。
赤ちゃんの頃から性質が表われているはずなので、ベビーマッサージのようななめらかで優しいタッチを好むかどうか思いだしてみましょう。
なめらかな動きを嫌がっても、ぎゅっとハグするのは好きかもしれません。優しくさするのは嫌いだけど、手を動かさずに同じところをじっと包むのは好きかもしれません。陸上でのスキンシップは嫌がるけど、水中なら喜ぶかもしれません。
自分にとって心地良い刺激が、相手にとって心地良いかどうかはわからない、という前提で様々な触覚を試してみるのが大切です。
イボイボ、ザラザラ、サラサラ、つるつる、プチプチ、ふわふわ、ギューギュー、つんつん・・
その子が「心地良い」と感じている時に幸せホルモンが分泌されるわけですから、まずはその対象物を探してみましょう。きっと「心のお守り」がみつかるはずです。
また、触覚トレーニングの一つとして着衣のまま、いつでもどこでも30秒でできる「花まるタッチ™」を試すのも良いでしょう。
触覚に対して過敏な人に対してのタッチケアで特に大切なことは
- はじめに了解を得ること
- 何をするか伝えること
- 順番通りに手を動かすこと
できることなら、花まるタッチ™の動きをぬいぐるみなどを相手に一緒にやってみてから、レシーバー役(受ける側)もやってみる?と誘ってみるといいかもしれません。
感覚過敏の人にとって手のひらのセンサーは眼球が外に出ているようなものです。直接手でふれるのではなく、手袋やグローブ、パペットなどを使って花まるタッチ™の動きをしてみるのもいいでしょう。
逆に感覚が鈍麻な場合、自分が不快に感じないため、バンバン、ガンガンと強い刺激で人にふれてしまうことがあります。花まるタッチ™のように「優しくふれる」という体験をすることで、感じ方は人によってイロイロで乱暴にふれると怒ったり泣いたり嫌な思いをさせてしまうのだ、ということも学ぶことができるでしょう。
自分とは違うけれど、こんな力加減がみんなは喜ぶらしい、ということを知っておくことはその後のコミュニケーションにとても役立つはずです。
すべての人にとって、感覚の基礎となる触覚を小さい頃からたくさん経験することは心の健康のために重要です。自分の苦手なもの、好きなものを知っておくことで問題を予防することにつながるでしょう。
4.ふれる場所について
タッチケアでふれていけない部分はもちろんふれませんが、それ以外にも自分の目で動きが確認できる体の前側から試してみるのがいいかもしれません。
一般的には背中や肩の花まるタッチ™が人気がありますが、後ろからふれられると、何をされるかわからなくて怖いので、背面は慣れてから試してみるのがいいかもしれません。
まずはぬいぐるみなどで練習して、それから膝や太もも、足首など自分でふれてみたり、ママとふれてみたりするのも良いでしょう。
5.最もおすすめなタッチケア
グレーゾーンの発達障害が問題になるのは、社会生活の上でにすぎません。その人の個性を理解している場所では、トラブルもなく幸せに暮らすことはいくらでもできます。
特にお子さんが小さい時は、困っているのはご本人というよりご家族のほうではないでしょうか?
これは個性の強いお子さんを育てるすべての大人にいえるかもしれません。
どんな個性でも、強ければ強いほど社会生活が始まると生き辛さを感じてしまうことがあるでしょう。だからこそ、社会生活でダメージを受けた時、いつもかわらずにおだやかに受け止められる家庭という名の安全基地でありたいですよね。
そこでタッチケアにおいて一番オススメしたいのは、発達障害のご本人というより周囲の方がタッチケアを楽しむことです。
タッチケアで増えることが期待される幸せホルモン・オキシトシンですが、周囲にうつると考えられています。ラットの実験で、オキシトシン量が高い一匹を入れておくと、同じカゴにいた他のラットも血中のオキシトシン濃度が高くなっていた、というのです。人間の実験でも、オキトシン値が高い人がタッチケアをするほうが、レシーバーのオキシトシンの上がり方も高い、という報告されています。どういう仕組みでうつるのか、まだ科学的に解明されていませんが、皆さんも楽しそうな人の近くにいれば明るいキモチになるし、暗い人の近くにいると、自分も落ちこんでくる、という経験をされていることでしょう。
まるで鏡のように、イライラにはイライラが、不安には不安が・・笑顔には笑顔が返ってきます。
ですから家族みんなが幸せホルモンに満たされ、心おだやかであることが、何よりも発達障害をかかえる本人にとって大切な安全基地になると思うのです。
そのために御本人に直接ふれなくても、家族みんなでタッチケアを楽しむことで同じ空間にいる全員のオキシトシンが増えたらいいですよね。
もしあなたのお子さんが発達障害なら、ママであるあなたから幸せホルモンがあふれてお子さんもオキシトシンが増えるようなイメージをしつつ、どうぞ思う存分心地良いタッチケアを楽しんでくださいね。タッチケアをおこなう側でも、受ける側でも、どちらでも効果がありますよ。
私達、日本エナジーハンド協会では、障害の有無に関わらず、多くの方にご家族みんなでタッチケアを楽しんでいただきたいと考えています。
ふれる心地良さをお伝えするために、対面レッスンでしか対応できませんが、ご興味のある方はぜひお問合せくださいね
触覚より先に視覚・聴覚が育ってしまう現代社会で、生きづらさや心の不安定さを感じる方が少なくありません。あなたが今、何歳だったとしてもタッチケアを通してぶれない心を養うことができるのだということを知っていただけたら嬉しいです。
文:一般社団法人日本エナジーハンド協会代表 宝官明子